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光探検隊が行く!!


ミッション:新開発の安価で使いやすい光ファイバセンサシステムを探る

探検場所:株式会社渡辺製作所

(株)渡辺製作所 01

さいたま市桜区の(株)渡辺製作所

光ファイバセンサは、その名の通り、光ファイバを検出や信号伝送に用いて各種の物理量を測定するシステムだ。よく知られたOTDR(Optical Time Domain Reflectometer:光学式時間領域反射率計)やFBG(Fiber Bragg Grating:1/2波長ピッチをもった光ファイバコアの長手方向に書き込んだ回折格子)などが代表的なものだ。他にもラマン効果を利用した分布型センサや干渉系を組んで光の位相変化を検出する干渉型センサ、ループ型干渉系を組んでサニャック効果で回転角速度を量る光ファイバジャイロセンサなどのタイプもある。光ファイバセンサはセンサ部分に電源を必要とせず、電磁誘導による障害を受けたり与えたりもせず、光伝送媒体が細芯・可撓(柔軟)・耐腐食性を備えているなどの特長のため、土木設備や構造物の診断等広域センシングへの応用など、様々な分野への応用に期待が高まっている。

現在、温度や歪などを対象にファイバーセンサとして利用されているのは、FBGやROTDR、BOTDRである。FBGはセンサ部分の温度や歪を求めるもの、ROTDRとBOTDRはラマン散乱やブリリュアン散乱を利用して、ファイバ上の温度や歪の連続的な分布を検出するものだ。これらのセンサはそれぞれに優れた特長を持っているが、ともに高価で、扱いが難しいという課題がある。

最近、渡辺製作所が、これらとは違った新しい方式により、安価で使いやすい光ファイバセンサシステムを開発したと聞き、早速、さいたま市の渡辺製作所を訪ね、開発した斧田誠一氏と小松康俊氏に話しをうかがった。

(株)渡辺製作所 02

斧田 誠一氏 (右)
(株)渡辺製作所 開発部 部長
1970年、東北大学大学院(電、博士課程)卒業後日立製作所中央研究所入社。光ファイバの研究開発に従事。東北大学と共同で単一モードW型光ファイバを開発。光伝送システム・部品事業立ち上げのため光技術開発推進本部、情報通信事業部を経て、2002年退職。翌日から現職。高速LANコネクタ、光センシングシステムの開発に従事。工学博士、技術士(電気・電子)。電子情報通信学会会員。
小松 康俊氏 (左)
(株)渡辺製作所 開発部 担当部長
1969年、東京大学工学部卒業後ソニーに入社し、SAWフィルタ、高周波及びマイクロ波回路、光導波路、ギガビット光伝送システム、CMOSIC等主にデバイスの開発に30年以上従事。2001年村田製作所に転職し、光通信用モジュール、MEMS応用光スイッチの開発を担当。2007年より現職。
工学博士、電子情報通信学会会員、IEEEメンバー。


新たな方式への挑戦

渡辺製作所は、埼玉県さいたま市桜区のJR中浦和駅から車で10分ほど走った荒川のほど近くにある通信用部品メーカだ。これまで電話やLANのコネクタ等を主要製品としてきた渡辺製作所が新しい光ファイバセンサを開発することになったのは、アクセス系光ファイバネットワークにおいて、メンテナンスを行う際に使用するOTDRを新方式により、より小さく、安価につくることができないかと考えたことからだった。「新しい技術で成長市場の既存システムを差別化し、新たな裾野需要を掘り起こしたいと考えました」と斧田氏は言う。

2005年より、斧田氏を中心として、DSP技研の塚本信夫社長、鹿児島大学の山下喜市教授、テスタ等の測定器を扱う日置電機、デジタル信号処理設計を得意とするリンク、埼玉県産業技術総合センタなどとチームを組んで、関東経済産業局の「地域新生コンソーシアム」として、「擬似ランダム符号相関方式による光伝送路反射計測システムの開発」を行なった。その結果、新方式により、“距離的な分解能をやかましく言わなければ"、ファイバの光故障点切り分け用途に使えるレベルになったが、一方で市場に出回るOTDR自体も進化し、小型化、低価格化が進んだため、プロジェクトの2年目からは、それまでの成果をそのまま方式拡張することによって、FBGに代わる光ファイバセンサの開発に重点を移した結果、新たな光ファイバセンシングシステムが生まれた。ディスクリート反射計測方式の光ファイバセンサならば、センシングする場所が決まった位置にあるため距離分解能についてOTDRほど厳しさが求められず、この新開発技術の特性が最大限生かせると考えたためだ。


2波長プッシュプル反射計測方式(DWPR)

新開発の光ファイバセンサは、2波長プッシュプル反射計測方式(Dual Wavelength Push-pull Reflectometry:DWPR)というもの。ファイバセンサの端面に多層膜BPF(Band Pass Filter:波長帯域フィルタ)を形成すると、その中心波長は温度や膜厚方向の圧力などに応じてシフトする。このBPFの反射率を、中心波長を挟んだ2つの波長で観測すると、波長シフトに応じてプラスマイナスプッシュプルに変化する。物理量に対応する波長シフトは2波長反射率の比から求めることができる。このセンサデバイスはBOFと名付けられている(BPF On Fiber -end)。

2波長反射率比は、擬似ランダム符号で波長が切り替わるプローブ光からの反射応答を相関解析することによって求めることができる。2波長の反射率比を取ることで、多層膜に作用する物理量変化以外の外乱要素がキャンセルされるため、外乱に強く、安定したセンシングが可能になるという。また、光ファイバ通信用として既に量産・実用されている半導体レーザやフォトダイオード、電気回路等をそのまま使えるため、波長可変レーザまたは広帯域光源と分光器を必要とする従来のFBG方式に比べ、安価に作ることが可能だという。さらに、FBGは分布型のデバイスであるのに対し、BOFは端面型のデバイスなので、作りやすくハンドリングも容易というメリットもある。以下もう少し詳しく見てみよう。


(株)渡辺製作所 03 (株)渡辺製作所 04
(写真左) DWPR方式ファイバセンサによる温度計測
(写真右) BOFセンサ


BOF(Band-pass filter On Fiber-end)センサ

ディスクリート反射計測方式では、FBGを使った光ファイバセンサが現在一番普及している。FBGは、ファイバコアの長手方向に屈折率周期構造(グレーティング)を形成し、グレーティングの周期によってブラッグ反射(グレーティングの周期に合致した波長の光を強く反射)させる構造で、温度や歪によってグレーティングの周期が伸縮し、ブラッグ波長が変化することを利用してセンシングする。
一方、DWPRファイバセンサシステムで使用するのは既に述べたようにファイバ端面に誘電体多層膜を直接蒸着したBOF(Band-pass filter On Fiber-end)センサだ。ファイバ端面プローブ型であるため、検出部が極小であるという特徴がある。多層膜は、TiO2とSiO2を積層したもので、被測定物からの印加物理量に対し、ひとつの波長に対して反射率が大きくなり、もうひとつの波長に対しては小さくなるプッシュプルに変化する2波長の光を計測に使用する。プッシュプルに変化する2波長の反射率比を求めるため、印加物理量以外の外乱要素がキャンセルされて、安定に正確な値を求めることができる。温度検出の際はBOFへの温度印加による屈折率上昇を、圧力検出の際は膜厚方向への加圧による弾性圧縮による膜厚減少を、加速度/振動検出の際には質量を介した膜厚方向への加圧により弾性圧縮を、それぞれ利用してセンシングする。
フェルールの先端に蒸着した多層膜は全部で約40層重ねているが、厚みはせいぜい数μm程度で、ある。屈折率は、TiO2がn=2.22、SiO2がn=1.46と大きな屈折率の差があるため、膜境界での反射率はFBGなどと比べて大変大きく、層数が非常に少なくてすんでいる。「実用段階では20層くらいのものにしたい」とのことだ。

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(左)2波長反射率比の温度特性

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(右)試作多層膜のSEM像

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(左)BOFの構造と原理

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(右)センサの反射スペクトルと
2波長光源波長


システムの構成と特徴

システム全体としては、プラットフォーム、スルーライン、センサ本体から成る。プラットフォームのPNジェネレータで擬似ランダム符合を発生させ、ハイレベルとローレベルに対応して波長の異なる2つのLDを発光させ、光カプラで合成している。スルーライン本線からは光カプラでバス型に分岐させ、その先にBOFセンサを設置する。センサ部分は活線状態で挿抜可能であるため、柔軟なシステム運用ができる。
センサから戻った光信号を一つのフォトダイオードで受信し、もともと送り出している擬似ランダム符号と混ざり合わせてデジタル信号処理で相関処理することにより、センサまでの距離と反射率比を同時に計測できる。平均化処理などが必要ないため、リアルタイム計測が可能だ。
また、同時多点観測時、多点で同一仕様センサを使用でき、温度センサと圧力センサのような異種センサを同時に混在させて使用することもできる。

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DW-PNCRのシステム構成


今後の計画

今回紹介した光ファイバセンサは、理論解析、シミュレーション、試作評価をし、既にセンサと方式の基本特許2件を出願済みだが、今後、製品化に向けて更なるブラッシュアップが必要である。冒頭に記したように、渡辺製作所は装置システムメーカではないため、共同開発、製造、販売を行うパートナーや、フィールドトライヤル、実地導入をするファーストユーザを求めているとのことだ。興味のある方はぜひ、下記まで問い合わせて欲しい。



お問い合わせ先
(株)渡辺製作所 開発部 部長 斧田誠一

本社:〒338-0835 さいたま市桜区道場709-1
TEL:048-856-0855(代)
FAX:048-856-0874
URL:www.watanabe-mj.co.jp

参考文献
・「光技術総合事典」(オプトロニクス社、平成16年)
・黒澤宏、横田光広:「ファイバー光学入門」(オプトロニクス社、平成15年)

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